コロナ禍でメンタル不調者増↑ ぜひストレスチェックを

Last Updated on 2022年5月30日

悩んでいる女性の写真

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、日本国内のうつ病・うつ状態の人の割合が、2倍以上に増加していることをご存知でしょうか?

度重なる自粛宣言、感染の不安、親しい人の喪失、業績不振による降給や人員削減などから、精神的に追い詰められてしまう人が続出し、メンタルヘルス不調を発症している方が増えていると言われています。
さらに薬剤師のような医療関係者や医療従事者は、感染者の治療に携わることで、高い緊張感や慢性的な疲労などの仕事のストレスだけでなく、感染への不安や差別、家族との関係の悪化などの精神的なストレスにもさらされています。

長引くコロナ禍で、誰もがメンタルヘルス不調に陥りやすい環境が続いています。特に、医療従事者の薬剤師さんはなおさらです。「自分は大丈夫」と過信せず、自身のストレス状況を知る機会として、ストレスチェックを受検してみてください。

今回のコラムでは、ストレスチェックの概要や、よくある疑問や事前に知っておいた方が良い知識をお伝えします。気になる部分だけでもぜひご覧ください。

 

チェックボックスの写真

◆ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、事業者が従業員に対し、心理的な負担の程度を把握するための検査のことです。2015年の労働安全衛生法の改正により、常時従業員を50人以上使用する事業所は実施を義務付けられました。

◆年1回の「こころの健康診断」

ストレスチェックは「こころの健康診断」に相当するもので、従業員のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐこと(一次予防)を目的としています。「体の健康診断」と同様に年1回、ストレスチェックを受けることで、自身のストレス状況や心の健康度を把握することができます。

◆なぜストレスチェックは必要なの?

現代人は常にストレスにさらされて生きています。過剰なストレスにさらされた状態でいると、心身共に興奮状態が続き、心の負担や疲労状態を自覚しにくくなることが少なくありません。そのまま心的負荷がかかり続けると、自覚のないままに心身が疲弊し、心の病を発症してしまうことがあります。このようにメンタルヘルス不調を発症してしまう労働者が年々増加していることから、ストレスチェック制度が導入されたのです。

ストレスチェックでは、自身のストレス状況を客観的な数値で確認することができます。自己のストレス状況への気づきを促し、「セルフケア」について考える機会となります。

◆ストレスチェックを有意義な機会にするためには?

ストレスチェックを有意義なものにするために、受検する際には、自身の現在のありのままの心の状態や生活環境について回答することが重要です。
ストレスチェックの質問内容自体は毎年変わるものではありませんが、その人自身の心の状態や生活環境は大なり小なり毎年変化があるはずです。現在の状態について、ありのままの回答をするよう心がけてください。

◆受検した結果「高ストレス者」に該当しなかった場合

「高ストレス者」に該当しなかったことは良いことですが、それで安心だとは言い切れません。ストレスチェックで調査できるのは「仕事に関するストレス」だけだからです。仕事以外のストレスで心身が疲弊している可能性もありますので、この機会に「睡眠、食欲などの体調に変化はないか」など、自身の生活を見直してみましょう。

◆受検した結果「高ストレス者」に該当した場合

従業員は「高ストレス者」と診断された場合、必要に応じて医師による面接指導を受けることができます。基本的には面接指導を受けて、しっかりと自身の心と向き合うことが望ましいです。ですが、既に医療機関で治療を開始しているケースや、面接指導自体をストレスに感じてしまうケースもありますので、面接指導はあくまで【任意】となります。ご自身の心の状態と相談しながら面接指導を受けるかどうか判断しましょう。

◆ストレスチェックの結果は上司に知られてしまうの?

「個人の結果は上司や同僚に知られてしまうの?」
「高ストレスと判定されると、人事評価に影響してしまうの?」
ストレスチェックの受検を希望されない方の中には、このようにストレスチェックに関する情報の取り扱いについて不安を感じている人がいます。

結論、ストレスチェックを受けなくても、また、たとえどのような受検結果であっても解雇や異動、降格など人事上の不利益な扱いは受けることはありません。また、ストレスチェックの結果が本人の同意無しで上司や同僚に開示されることはありません。

ストレスチェックの受験結果を取り扱い、閲覧することができる「ストレスチェック実施者」や「ストレスチェック実施事務従事者」には、法律で守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。このようにストレスチェック制度では、労働者の健康情報が適切に保護されることを強く求めており、事業者はこれに則ってストレスチェックを行うため、従業員は安心してストレスチェックを受検することができます。

◆個人情報の取扱いに不安があるなら

個人情報の取り扱いに不安がある場合は、勤務先に「実施者・実施事務従事者は誰なのか?」「結果を取り扱うのは誰なのか?」と問い合わせてみるのも良い手段かもしれません。事業者はストレスチェックを実施する前に、衛生委員会等で実施体制、方法、スケジュール、結果の取り扱い方法等を審議し決定しています。もしはっきりとした回答が得られず、不安が解消されない場合は、ストレスチェックは強制ではないので無理に受検する必要はありません。
厚生労働省が提供するポータルサイトで、「5分でできる職場のストレスセルフチェック」という、セルフチェックサービスを利用することができます。何らかの理由で勤務先のストレスチェックを受検されない場合は、こちらの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

◆要確認!高ストレス者となり、面談指導の申出を行う場合

これまでストレスチェックに関する情報は、本人の同意無しで上司や同僚に開示されないと説明してきましたが、面接指導の申出を行う場合は、法令上「以下の情報を勤務先と面接を担当する医師に提供することに同意した」とみなされます。

(1)個別のストレスプロフィール
(2)ストレスの程度(高ストレスに該当するか否か)
(3)面接指導の対象か否か

面接指導を行う場合は、高ストレス状態を改善する取り組みを検討するために、必要な情報が勤務先に開示されることは理解しておきましょう。

おわりに

当社アプロ・ドットコムでも、毎年春にストレスチェックを行っていますが、当社はプライバシーマーク取得企業(個人情報を適切に扱っていることを第三機関に証明されている企業)にストレスチェックを外注しています。
そのため、ストレスチェックに関わる業務を行う社員でさえ、受験結果を閲覧することは不可能です。安心してご利用いただけるよう、このような環境を用意しています。

正社員の薬剤師さんであれば、真っ先に責任を負う立場で、常に高ストレスにさらされる状況にいます。また、弊社には多くの派遣薬剤師さんがおりますが、派遣薬剤師さんであれば、日々ミスの許されない仕事を行っていること、正社員だった頃と比べて上司や同僚のサポートが得づらいこと、コロナ感染の不安などがストレスの原因になる可能性があります。

働き方に関わらず、ストレスを自覚せずに、突然メンタルヘルス不調を発症してしまう人がいます。ストレスチェックでは客観的な数値でストレス状況を確認することができます。心身ともに健康・健全な状態でいるために、「自分は大丈夫」と決めつけず、年1回、ストレスチェックを受検しましょう。