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アプロママ特集
2024.08.06
ママ薬剤師の悩み「扶養内で働く?外れて稼ぐ?」働き方と収入のバランスを考える
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ママ薬剤師が抱える悩みのひとつに「収入を扶養内で収めるかどうか」があります。扶養内なら所得税や住民税のほか、健康保険料、厚生年金といった社会保険料を自身で払う必要がありません。働いた時間に対して手取り収入の比率が高くなるため、扶養内で働きたいと考えるママ薬剤師は多いでしょう。
また、子育てとの両立を考えるとフルタイム勤務は難しく、パートや派遣などの短時間勤務なら扶養内で収めたいという人もいます。ただ、長期的な視点で見ると扶養から外れることによるメリットも存在します。
今回は、薬剤師が扶養内で働くケースと扶養を超えたケースとを比べつつ、具体的な収入や働き方についてみていきましょう。
ここでは夫がサラリーマンや公務員の場合を想定しています。夫が個人事業主や法人代表の場合、扶養という概念がないため当てはまりません。
目次
そもそも扶養とは?
扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があり、税法上の扶養内であれば住民税や所得税を自身で払う必要がありません。社会保険上の扶養内であれば健康保険料を払うことなく3割負担で医療を受けられます。年金では第3号保険者となるため自身で保険料を払わなくても国民年金に加入できます。
どちらの場合でも扶養を超えて働くと、税金や保険料を負担する必要があるので手取りの年収が減少します。そのため扶養を少し超えるくらいなら、働く時間を調整して扶養内に収めた方が手取りの世帯年収が増えることになるのです。
なお、税法上の扶養よりも社会保険上の扶養を外れた時のほうが、世帯年収の減り幅がが大きくなります。以下で詳しくみていきましょう。
扶養から外れる年収の目安
年収が上がるにつれて状況が変わってきます。「〇円の壁」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。この「〇円」を境に扶養内か、扶養から外れるかが決まります。
年収103万円
所得税が課税される年収です。所得税は給与から給与所得控除額を差し引き、さらに全員に適用される基礎控除を差し引いた金額(課税所得金額)を基に計算されます。収入金額によって異なりますが、年収103万円の場合、給与所得控除は55万円、基礎控除は48万円です。
つまり103万円―55万円―48万円=0円となるため、所得税は課税されません。103万円を超えると課税所得金額が0円ではなくなるため、所得税を納める必要があります。さまざまな条件が絡むため一概には言えませんが、年収104万円だと年間の所得税は約500円、年収105万円なら約1,000円です。
また、自治体によって異なりますが、年収100万円を目安に住民税が課税されます。詳しくはお住まいの自治体の情報を確認してください。なお、住民税は前年の収入を基に計算が行われます。前年の年収が100万円、今年は80万円であったとしても住民税の支払い義務がありますので、注意が必要です。
基本的に年収103万円を超えると所得税が課されますが、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等)を利用している場合、納めた保険料が控除されますので、103万円を超えても課税されないことがあります。
なお、夫の企業から家族手当が支給されている場合、妻の給与は103万円未満といった条件が課せられていることがあります。詳しくは夫の勤め先のルールを確認してください。
103万円に収めるなら、週何日?1日何時間?
時給が1,800円、2,000円、2,500円の場合で考えてみましょう。
・時給1,800円
週に12時間以上働くと、年収103万円を超えてしまいます。週3日、1日3時間で年収は約77万円、週2日、1日5時間で約86万円です。
・時給2,000円
週に10.8時間以上働くと扶養から外れてしまいます。目安としては週3日、1日3時間で約86万円、週2日、1日5時間で約96万円です。
・時給2,500円
週に8.6時間以上働くと年収103万円を超えます。時給が高くなる分働く時間が短くなり、週2日、1日4時間で約96万円が目安です。
年収103万円に収めようとすると、時給の高い薬剤師は働く時間がかなり少なくなります。復帰直後で、家庭と仕事のバランスを模索している時にはこの程度がちょうど良いと考える人も多いかもしれません。
年収106万円
次の5つの条件を全て満たした場合、健康保険料や厚生年金といった社会保険料を支払う必要があります。
・勤務している事業所の被保険者数が101人以上(※101人以上については、令和6年10月から51人以上に変更されます)
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8.8万円以上
・2か月を超える雇用見込みがある
・学生ではない
さまざまな条件が絡むため一概には言えませんが、106万円を少し超えた程度だと、世帯年収はママ薬剤師の年収が100万円だった時より少なくなります。
手取り収入の減少幅が大きいため、106万円の壁はできる限り回避したいものです。働く時間の調整だけでなく、求人選びに気をつけることも重要です。上記の5つの条件全てに当てはまらない限り扶養を外れることはないため、事業所の被保険者数が101人未満(令和6年10月から51人未満)の小規模な職場を選んだり、短期派遣や短期バイトを選び雇用期間を2カ月未満にしたりすれば、年収が106万円を超えても扶養内でいられます。
また週の労働時間を20時間未満に抑えれば良いため、1日6時間、週3日や1日8時間、週2日といった働き方をすれば、扶養を外れることはありません。
106万円の壁を超えた途端に手取りが大きく減少することを避けるため、就業調整する人が多く、経済に支障が出てきました。そこで令和5年10月に、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表。厚生年金や健康保険料の加入に併せて手取りを減らさない取り組みを実施する企業に対し、労働者1人あたり最大50万円を支援することが決まっています。
この支援金は従業員個人に直接還元されるのではなく、企業が支援金を使って賃上げによる基本給の増額を行い従業員の手取りを減らさないようにするなど、さまざまな対策を行うためのものです。この措置は令和7年度末まで続く予定です。
106万円に収めるなら、週何日?1日何時間?
薬剤師の時給は高いため、少し多めに働くと106万円を超えてきます。
・時給1,800円
週に13時間以上働くと、年収106万円を超えてしまいます。週2日、1日5時間で年収は約86万円、週2日、1日6時間または週3日、1日4時間働くと年収は約103万円です。
・時給2,000円
週に11.1時間以上働くと扶養から外れてしまいます。目安としては週2日、1日5時間で約96万円、週3日、1日3時間で約86万円です。
・時給2,500円
週に8.8時間以上働くと年収106万円を超えるため、週2日、1日4時間で約96万円が目安です。
年収130万円
職場の被保険者の人数、週の労働時間、雇用期間などに関係なく、年収130万円を超えると誰でも扶養から外れ、勤務先の健康保険料、厚生年金保険料に加入し、保険料を支払う必要が出てきます。
勤め先や月収によって異なりますが、厚生年金保険料の目安は1カ月で7,000~10,000円程度。つまり、年間84,000~120,000円の負担増になります。健康保険料の目安は1カ月で3,000~7,000円程度のため、年間36,000~84,000円を支払うことになります。
厚生年金保険料、健康保険料を合わせると年間で120,000~204,000円程度の負担増になるため、世帯年収に与えるダメージは大きいといえるでしょう。40歳以上の人はさらに介護保険料も支払う必要があるので、負担額はさらに増えます。130万円を超えないように調整をしたいと考える人が多いのもうなずけます。
そのため106万円の壁と同様、国が支援パッケージを発表しています。パート・アルバイトで働くママ薬剤師が繁忙期に残業するなどして一時的に収入130万円を超えた場合、連続して2年までは夫の扶養に留まれるようになりました。
ただし薬局等が「一時的な増加である」と証明することが必要です。また、基本給で130万円を超えてしまった場合は対象外となるので注意しましょう。こちらも令和7年度末までの措置となっています。
130万円に収めるなら、週何日?1日何時間?
繁忙期にシフトを多めに入れると、年収130万円を超えてしまうことがあります。秋~冬が繁忙期となる薬剤師は注意が必要です。
・時給1,800円
週に15.1時間以上働くと、年収130万円を超えてしまいます。週3日、1日5時間で年収は約129万円、週2日、1日7時間で年収は約120万円です。
・時給2,000円
週に13.6時間以上働くと扶養から外れてしまいます。目安としては週2日、1日6時間、または週3日、1日4時間で約115万円です。
・時給2,500円
週に10.9時間以上働くと年収130万円を超えるため、週2日、1日5時間で約120万円が目安です。
年収150万円
年収103万円を超えると配偶者控除から外れますが、引き続き配偶者特別控除を受けることができます。夫の年収によって控除額が異なりますが、夫の年収が合計所得金額900万円以下(年収の目安は1,120万円以下)の場合、妻の年収が150万円以内なら配偶者特別控除として夫の給与から最大38万円が控除されます。つまり夫が納める税金が少なくなるため、世帯年収を増やすことができるのです。
妻の年収が150万円を超えると段階的に控除額が減っていき、201万円を超えると控除がなくなります。なお、夫の合計所得が1,000万円を超えていると、妻の年収に関係なく配偶者控除は受けられません。
税法上の扶養の壁は、社会保険上の扶養の壁のように基準となる年収を超えても世帯の手取り額が大幅に減らない工夫がされているため、強く意識する必要はないでしょう。
扶養を外れるメリット
手取り収入だけを考えたら扶養に入っていた方がお得ですが、扶養を外れることによって得られるメリットもあります。
・傷病手当金と出産手当金がもらえる
自身で健康保険料を払うことによって、業務外の病気やケガで会社を休んだ場合に、通算1年6カ月にわたって給料のおよそ3分の2にあたる傷病手当金を受け取ることができます。夫の扶養家族になっている場合、妻が体調不良で働けなくなったら妻の収入は0円のまま補填はありません。
また、出産予定日の6週間前から出産後8週間まで給料のおよそ3分の2がもらえる出産手当金も受け取ることができます。もう一人産みたいと考えている人にとっては、お得な制度といえるでしょう。
・将来受け取れる年金額が増える
扶養内の場合、自身で年金保険料を納めなくても国民年金を受け取ることができます。しかし、厚生年金に加入することで、将来は国民年金に加えて厚生年金も受け取れるようになります。人生100年時代といわれる今、長期的な視点で人生プランを考えることも重要です。
また、厚生年金に加入している人が所定の障害を負ったり、亡くなったりした場合には、障害厚生年金や遺族厚生年金を受け取れるなど、手厚い保障を受けることもできます。
なお、妻の年収が160万円程度になると、夫婦それぞれが税金や社会保険料を支払っても世帯の手取り額は130万円の時より多くなるようです。扶養を外れて働きたい場合は、年収160万円をめざしてみると良いでしょう。160万円以上なら働いた分だけ手取りの収入が増えるため、働き損になることはありません。
子どもが大きくなったら、働く時間を増やすのもメリットあり!
子どもが小さいうちは育児をメインにし、仕事をセーブするのも良いかもしれません。しかし、子どもはどんどん成長して手がかからなくなる一方、食費や教育費などの出費は増えていきます。
子どもの手が離れてきたら、1日4時間勤務を6時間にする、週2日を週5日にするなど、勤務時間を増やし、扶養を外れて働くことを検討してみましょう。
扶養内で働いている場合、勤務時間や日数が少ないため調剤だけ、服薬指導だけといった限定的な業務になりがちです。また昇給やボーナスも期待できないため、収入面でも不利になります。
勤務時間を増やして多彩な経験を積めば転職時に有利になるほか、かかりつけ薬剤師や管理薬剤師にキャリアアップすることも可能。年収を大きく増やすこともできます。職場によってはパート社員に向けて正社員登用制度を設けていることがあります。思い切って正社員となり、キャリアを築いていくことも考えてみましょう。
大事なのは自分らしい仕事・働き方とワークライフバランス
扶養内で働くにしても、扶養を外れて働くにしても、それぞれメリット・デメリットがあります。人によって育児と仕事の最適なバランスは異なりますし、子どもの年齢によっても変化していきます。
大事なのは、常に自分にとって最適は働き方、時間などを考え続け、定期的に見直すことです。
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